2012年4月11日水曜日

天国と死後世界 サンダー・シングとカイラスの大聖との対話 アルフレッド・ザヒル著 林陽訳


第一章 カイラスの大聖

 ああ、あなたに私の生命が捧げられ、
 あなたのために私の歳月が費やされますように!
 世の足かせはみな断ち切られます。
 苦しみは歓びに変わります。
 あなたは私のために身を捧げてくださいました。
 私はあなたのために我が身を捧げます。

 サンダー・シングは、国内のほとんどすべてを巡ってきたが、常に思いが寄せられて
いたのは、ほとんど文盲の人々ばかりが住み、権力者がキリスト教の影響とプロパガ
ンダを敵視している北インドの丘陵地帯であった。『十字架を愛する者』をお読みにな
れば、これらの地域を旅する人々を待ち構える、災いと危険のほどが十分お分かりい
ただけると思う。(訳注:『十字架を愛する者』はザヒル氏が書いたサンダー・シン� ��の
伝記です)。

 一九一二年の夏、サンダー・シングは、テーリ・ガルワルとガンゴトリを含む幾つかの
丘陵地帯を伝道しながら、カイラスへ向かっていた。カイラスは、インド人にとって非常
に聖なる場所であり、さまざまなインドのリシ(訳注:インドで聖仙と呼ばれる人々)や見
神者の故郷とされている山である。サンダー・シングは、この旅の途中で、不意に、石
造りの十字架を固定するある岩にぶつかった。インドの神々の里として有名なこのよ
うな場所に十字架があるのを見て、彼は非常に驚かされるとともに、さらなるキリスト教
の痕跡を発見するべく、近隣の探索を開始した。だが、周辺地域を苦労して何キロも
探索するうちに、元の道を見失った。

 数日間当てもなく放浪してから� �サンダーは探索を止めて平原に引き返さざるをえな
くなった。こうして、カイラスから引き返す途中、斜面を降っていたある日、太陽の強い
陽射しが目を打ち、幻惑されるあまり、自分がどこを歩いているのかも分からなくなっ
た。そのようにして放浪しているあいだに、不意に氷に足を取られてバランスを失い、
斜面を滑り落ち、数メートル下に落下した。転落のショックで気を失い、数分間茫然と
して身動きできずにいたが、われに返って目を見開くと、大きな洞窟の前に自分が落
ちたことを知った。その洞窟の入口に、見るも恐ろしい姿の、全身毛に覆われた老人
が座っていた。サンダーはこの光景に驚くあまり、覚めたばかりの気絶状態に逆戻り
しそうになった。


南部acsentはどこから来たの

 だが、前にいる人をさらに仔細に観察してみて、全身が長い毛髪に覆われているた
め野の獣のように見えたものの、間違いなく、自分が人間を見ていることを知った。
以下は、この老人についてサンダーが語ったものである。
 「彼の毛髪と髭は地表にふれるほど長く、眉毛は顔を遮っていた。掘る目的に使って
いると思われるその爪は、数インチ(訳注:一インチは二・五センチ)もの長さに伸びて
いた。彼は衣類をまとってはいなかったが、長い毛髪が、体のほとんどの部分を覆って
いた」

 この周辺では、インド人リシの存在が伝えられていたため、サンダーは彼もインドの
行者に違いないと考えた。その間、サンダーは口を開� ��ことができなかったが、ついに
意を決っして、土地の言葉で男に話しかけた。初め、彼はサンダーの言葉を気にもと
めず、相変わらず瞑目したまま無言で座っていた。だが、サンダーが言葉をかけて一、
二分ほどすると、目を見開いた。サンダーはこう語る。

 「目には非常な輝きがあり、私の心の奥底を見通し、思いを見透かしているかのよう
な鋭さがあった」
 老人は目を見開くと、こう述べた。
 「話し始める前に、祈りの言葉を捧げましょう」
 このように言うと、彼は大きな巻物の聖書を開き、マタイ福音書の第五章から聖句を
読み上げた。読み上げると、祈るために跪き、主イエズスの御名で終わる、非常に熱
心かつ厳粛な祈りを捧げた。
 このような荒涼たる地域に熱心なキリス� �者と祈りの人を見出せるとは予想もしてい
なかったため、サンダーにとって、これは非常な驚きとなった。初めは、欺かれている
のだろうかとも考えたが、その後に続いた話を通して、これはすべて神のお計らいに
よるものであり、神は霊的なことがらについての知識を増し、より強い信仰をもったしも
べとなるために、自分をここに導かれたのであると確信した。
 ここで、サンダーは老人に過去の履歴と、このような場所に導かれるに至った経緯
を話してくれるよう求めた。以下は、老人自らがサンダーに語った、簡単な生い立ちで
ある。
 
 老聖人自らが綴るその生い立ち


私は着色のページの責任です知っている

 「私は彼らに永遠の命を与える。彼らはけっして滅びることなく、私の手から彼らを奪
い去る者は誰一人いない」(ヨハネ十28)
 
 今よりおよそ三一八年前、エジプト、アレクサンドリアのイスラム教徒の家に、私は生
まれた。終夜祈祷と日々の黙想を通して神の奥義に通じ、霊的な事象についてより完
全なる知識を得ようと、三〇歳にして世を捨て、隠者になった。だが、自分の目的を達
し、落ち着かぬ魂に安らぎを与えるべく苦闘したにもかかわらず、この目標に向けて自
分を助けてくれるものは何一つないように思えた。そればかりか、月日が経つにつれ、
魂はますます落ち着かなくなり、私は内的な闘争の力を 静め、歓びのない心に平和と
安らぎを与えてくれるものを求め始めた。

 このようにして、霊的な苦しみの最中にあったある日、キリスト教の聖者がインドから
来たことを知らされた。彼は罪人を救い、疲れた者を休ませる力をもつという救い主に
ついて説教をしていた。これを聞いたときに、私も彼に会い、私を苦しみから救う力が
彼にあるかどうかを知りたくなった。

 その聖者との出会いを考えていたある日、驚いたことに、その人自ら、私を訪問して
くださった。その人は、私が悲しみにひしがれているのを見て、沈んだ心を元気にし、
安らぎとなる言葉をかけてくださった。話を交わす中で、イエズス・キリストについて多く
のことを語ってくれた。主が地上で過ごされた、聖なる模範的な人 生、罪人を救うその
力、倒れた、身寄りなき者に向けられたその愛と気遣い。この神の人の愛と情け、そし
て、イエズスについて彼が話してくれた幾つかのことがらが、私の心に不思議な感化を
及ぼした。そして、私は自分の試練の時期が今や終わり、長いこと求めながらも得ら
れずにいた、あの心の平和と霊魂の幸せを得るべきときが来たと、内に確信するよう
になった。

 このキリスト教の聖者は、最初の訪問以来、何度も私を訪ねて来られ、イエズス・キリ
ストとその救いの力についてさらに多くの話をしてくださった。救い主について聞けば聞
くほど、学べば学ぶほどに、ますます、私の心は主に奪われた。ついに、イエズスが、
主お一人が私の乱れた魂を静まらせ、内なる平和と歓びを与えて� �ださることに、一抹
の疑いも挟まなくなったときに、私は師から洗礼を受けてキリスト者になった。直ちに新
しい歓びが魂に入り、外に出て魂の救い主について人々に話したいという衝動に駆り立
てられた。それで、もっと多くを学び、強い信仰を持てるために、国内伝道旅行に随行
することを許してくれるよう、師に願い出た。幸いにもこの願いは認められ、私は聖者と
共に旅をすることになった。


ナッシュビルを行うには、 3/17/06のもの

 東洋で働いたイエズス会伝道師の中でもっとも優れた存在と思われる、かの有名なフ
ランシスコ・ザビエルの甥、イェルナスが、わが敬愛する教師の名である。このイェルナス
は、ほぼ全世界を行き巡り、インドでも数年間を過ごし、中でも皇帝アクバル、その他の
著名人と宗教指導者たちに洗礼を授けた。
 (訳注:イエルナスはラテン語のヒエロニムス、英語のジェロームに対応するアラビア語。
この人は、ザビエルの甥でインド伝道に大きな役割を果たした、ジェローム・ザビエルか
もしれません。ムガール王朝時代のインド絵画に、アクバル王と共にしばしば描かれて
います)

 この新約聖書の巻物もまた、わが師イエルナスから賜ったものであり、私にとってはか
� �がえのない宝物である。それは、コンスタンティヌス皇帝の時代に写経された新約聖
書の数少ない写本の一つなのだ。フランシスコ・ザビエルが数年間それを所持していた。
彼が死んでから、わが師である甥の手に渡った。
 共に数年を過ごしてから、師は私を一人にされ、導かれるどこにでも赴いて神のみ言
葉を伝えるようお命じになった。彼の命令に従い、私はまる七五年間、すなわち一〇五
歳になるまで、ほとんど世界全域を行き巡り、町から町へ、国から国へ神のみ言葉を伝
えて歩いた。かくまで多くの国々を巡った結果、私は二一ヶ国語に通じるようになった。
 一〇五歳になり、体力と精神力に衰えが見え出し、活発な仕事に持ちこたえられなく
なったと感じてから、私は、完全な隠居の中で余� �を過ごし、たえざる祈りと黙想と、活
発な伝道に励んでいる主のしもべたちの執り成しの中で生涯を終えることを決意した。

 このような意図を持って、私はかつて旅をしたことのあるインドのこの場所に来たので
ある。私が選んだ地点は、人の集落からはほど遠く、どんな人間からもこの静寂な生活
をかき乱される危険はない。まわりに広がっているのは、たくさんの果実と薬草だらけの
自然の庭園である。それを食べて私は生きている。その中には、特定の病に有効なも
のもあれば、毒を含むものもあり、生命の液そのものを含むものもある。これらを食用
にすることによって、私は自分の中に今もある力を得ているのだ。


 夜昼なく雪の降る冬場には、野生の熊たちもこの洞窟に入ってくるので、われわれは
共に寝て、互いを暖め合う。この洞窟でしばらく過ごしてから、私は、この仮の宿を離れ
て天の故郷に帰るときが来たと考えた。だが、これほどの歳月が経過したにもかかわら
ず、私は一向に、肉体にも精神にも衰えを感じないのだ。ある日、私は座って瞑想しつ
つ神に祈り、それが御心であるならば、私を天の故郷に戻していただきたいと神にお願
いしたが、突然、洞窟の中に不思議な振動音が聞こえてきた。何百匹もの鳥が中で飛
び立っているようにも感じられた。だが、上を見ても、下を見ても、何も目に入らなかった。

 音がし始めてからしばらく経ったが、やはり何も 見ることができない。そこで、私は姿勢
を正してこう祈った。
 「ああ、神様、もしこのことに何かの秘密が隠されているのであれば、どうかしもべにそ
れを明らかにし、御心を知らしめてください」
 祈り終わらぬうちに、何者かに瞼を触られているかのような感触を覚えた。それが起こ
るが早いか、霊眼が開かれ、何百人もの御使いが洞窟を埋め尽しているほか、それ以
上の天軍が神を褒め称える賛美歌を歌いつつ、天から舞い降りてくる光景を見た。この
天軍以外に、彼らの王であられる、イエズス・キリストさえ天から降り、私のほうに降りて
こられる光景を見た。それを見て、私は地に顔を埋めて主を仰いだ。

 だが、まもなく、主は手をとって私を起こされ、このようなお言葉をかけられた� �である。
 「わが忠実なるしもべよ。決して死なず、近づくわが再臨のときまで体の中で生きている
よう、私はあなたに永遠の生命を授ける。これ以後、あなたは、私の教会のために執り
成しの祈りを捧げるために、時を過ごすのである」
 主がこのお言葉を話されてから、私は新しい心、罪と穢れから清められた心を与えら
れ、自分が新しく生まれ変わったように感じた。それから、主と聖なる御使いの大いなる
軍勢が天に向かって離れるのを見た。

 彼らがみな離れると、何人かの聖人が私に近づき、与えられた新生と大いなる特権を
喜ぶよう促された。彼らは、地上で人生を終え、今や永遠の安息に入り、栄光の冠を得
た人々であった。そのとき以来、この聖人たちの誰かが常に共におられ、私が� ��から託
された仕事を全うできるよう助けてくださっている。今や、私の唯一の仕事は、全世界に
広がるさまざまな派のキリスト教会のために、執り成しの祈りをすることにある。私は、
神への賛美と詠唱を歌い、聖句を読み、それに黙想しながら、祈りと執り成しの時間を
もつことで一日を開始する。


 神が私にお委ねになった特権は他にもある。それは、霊において全世界の各所を訪
れるということである。彼らの特別な必要と弱さを知ることなくして、どうしてさまざまな
教会のために執り成しの祈りができようか。こうして、体を洞窟の中に置いたまま、霊
においてさまざまな人と場所を訪れることに、一日の何時間かを費やしている。

 ああ、神の道よ、
 悲しみと戦いを通して、
 私たちを父のみ顔に近づけてください。
 ああ、天上の真理よ、
 ああ、いとも尊き生よ、
 いつの日か、
 いつの日か、
 私たちはあなたの中に安らぎます。



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